絵画で読み解く

民衆社会、市民社会の中を歩く

2019-01-01から1年間の記事一覧

民衆を人間として描いたブリューゲル

ピーテル・ブリューゲル(父)《農民の踊り》(部分)1568年、美術史美術館(ウィーン)蔵 民衆を人間として描こうとしたのは、ブリューゲルから始まるのかもしれない。 ブリューゲルは民衆をことわざを具象化するものとして扱った。 しかしその作業の中から…

自然と文化の境界に位置する「子ども」

「子ども」には前言語的レベルにある子どもと近代家族の中で誕生した子どもとの二つの異なる位相がある。 ブリューゲルの《農民の婚宴》に登場する子どもは、前言語的レベルにある子どもだといえるだろう。前言語的レベルというのは、人類史以前の段階にある…

悪魔を縛り付けるのは愚かな農婦

ピーテル・ブリューゲル(父)『老女の肖像』1563年、アルテ・ピナコテーク(ミュンヘン) 愚かな老婆の顔。けれどもただ愚かなだけではない。 ネーデルラントの諺にもあるように、悪魔も縛り付けてしまうような愚かさなのだ。ブリューゲルは都市の教養人だ…

地上における神の代理人だった乞食たち

ピーテル・ブリューゲル(父)の描く《謝肉祭と四旬祭の喧嘩》(1559年、ウィーン美術史美術館)の右側には寄進を求める乞食たちの姿が描かれている。 教会での礼拝を済ませた信心深い人たちに寄進を求めているのだ。 現代社会では、乞食は社会生活から脱落…

逆さまな世界を表現する乞食の結婚式

ピーテル・ブリューゲル(父)の描く《謝肉祭と四旬祭の喧嘩》(1559年)の左隅にこんなシーンがある。「汚い花嫁またはモプサスとニサの結婚式」というタイトルの灰の水曜日の3日前のざんげ節の際に演じられる大道演劇のようだ。ぼろぼろの結婚式のテントか…

新しいカタチの宗教画:ブリューゲル『ベツレヘムの人口調査』

ピーテル・ブリューゲル(父)『ベツレヘムの人口調査』1566年、ベルギー王立美術館(ブリュッセル) 1566年はネーデルラント全域でカルヴァン派による聖像破壊運動が吹き荒れた年だ。 教会の中の彫刻や絵画は偶像崇拝につながるものとして破壊された。その…

説話の世界から離れる民衆像『ゴルゴタの丘への行進』

ピーテル・ブリューゲル(父)の絵に登場する民衆は、はじめのうちはことわざの世界に住む民衆だ。 しかし1665年の連作『月暦画』から、民衆それ自体が描かれるべき対象となる。その転機になるのは、1664年作の『ゴルゴタの丘への行進』からだろう。そこでは…

小さく描かれる霊的なドラマ——ブリューゲル《パウロの回心》

ピーテル・ブリューゲル(父)《パウロの回心》 (1567年、美術史博物館蔵 、ウィーン) パウロはイエス・キリストの12使徒の一人。 キリスト教の迫害者だったが回心して信者となる。キリスト教徒を迫害する旅の途上でパウロが天からの光を受けて落馬し、目が…