最晩年にヨルダーンスを模したゴッホ
リール美術館にあったヤーコブ・ヨルダーンス(1593ー1678)の習作の絵を、医師ガッシェがコピーしたドライポイントをもとに描いたようだ。
ゴッホは1890年7月29日に亡くなているので、最晩年の作品の一つだといえる。
ヨルダーンスはアントウェルペンの人で、現在の国としてはベルギーということになるが、ベルギー、オランダはネーデルラントが二つに分裂しただけの土地なので、ゴッホにとっては故郷の匂いのする画家に違いない。
アイロンをかける女に、近代市民社会の全重力がのしかかる
下層階級の民衆の姿は、初期のピカソでは陽気さを失う。女はアイロンをかけてるというのではなく、アイロンに縛り付けられているのだ。細い身体に近代市民社会の全重力がのしかかる。
糸紡ぎで運命をつかさどる老婆
フランシスコ・デ・ゴヤ『糸紡ぎをする老婆』1819年、メトロポリタン美術館蔵
1819年にゴヤはマドリード郊外に「聾者の家」と通称される別荘を購入した。この「聾者の家」で14点の「黒い絵」のシリーズが描かれる。この絵は別荘を購入した時期に描かれたもの。 糸紡ぎをする老婆は、おそらく運命をつかさどる存在なのであろう。「黒い絵」を描く前の、ゴヤの決意をあらわすものなのだろうか。