若桑みどりによると、蛇は大地母神の親しいアトリビュート(絵画や彫刻などで、
神あるいは人物の役目・資格などを表すシンボル)だった。
この蛇が中世ヨーロッパでよみがえる。
アダムとエヴァを原罪へ導いた蛇が、女として描かれることによってである。
蛇がイシスをはじめとする太古の母神の付属物であったことはすでに述べたとおりである。この独特の図像によって、蛇と女の結びつきが太古の女(神)から、新しい時代(ユダヤ・キリスト教の)の女へと受け渡されていることがはっきりする。(中略)中世末ではランブール兄弟による「ベリー公のいとも豪華なる祈祷書」(1415年頃、コンデ美術館)にも、ボスの「乾し草車」(1485-89、プラド美術館)のもロヒール・ファン・デル・フースの「原罪」(1470頃、ウィーン美術史美術館)にも女の蛇が見られる。
(若桑みどり『象徴としての女性像』筑摩書房、2000年、156ページ)



若桑によると、蛇は太古の母神の付属物であった。
蛇が女として描かれることによって、太古の蛇と女の結びつきがよみがえる。
しかしそれは堕落した女としてよみがえるのであり、
大地母神のアトリビュートは豊穣を呼ぶものとしてではなく、
人間を原罪に陥れる悪魔として描かれるのである。
若桑によると15世紀末から17世紀にかけての時代は「魔女裁判の世紀」であり、
史上稀にみる女性迫害の歴史であった。
その迫害は、大地母神のアトリビュートを悪魔と置き換えることによって始まったのだといえるだろう。