絵画で読み解く

民衆社会、市民社会の中を歩く

大地母神としてのマリアと穀霊としてのイエス

 

ヒューホ・ファン・デル・フース作《ポルティナリの祭壇画》(部分)1475-80年、フィレンツェ、 ウフィツィ美術館

若桑みどり(西洋美術史・表象文化史・ジェンダー史・ジェンダー 文化論)によると、ファン・デル・フース描くところの聖母子は、大地母神と穀霊を表わしているということだ。

アルプス以北の画家たちがイエス誕生の画面に描く藁や麦には、聖母に擬された豊饒女神への供物の名残がある。ヒューホ・ファン・デル・フースの描いた「ポルティナーリの祭壇画」の画面下端のイエスの裸の体の下の藁がその一例である。(若桑みどり『象徴としての女性像』75ページ)

イエスの死と再生は穀霊の死と再生であり、
この絵では、マリアは穀霊であるイエスの再生に立ち会っていることになる。
ファン・デル・フースの描くイエスは、偉大な神であるというよりも、
母親の手によって死から再生した赤子のように見える。
右側の三人の男たちは、羊飼いというよりも、穀物の豊穣を祈願する農夫なのかもしれない。

キリスト教的な世界というよりは、古代ゲルマン的な世界が顔をのぞかせているような気がする。